整備・修理

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2008 BMW X3  難解電装トラブル 

2015/04/10

症状
*走行中ナビ画面が真っ暗になる。
*走行中フラッシャーランプがメーター内だけ作動しない。
*走行中オーディオが使えなくなる。
*走行中ステアリングスイッチが使えなくなる。
上記症状は走行中に時々起こるが走行中に復活もする。同時に起こるわけではない。
エンジン停止後、時々再始動しない。(クランキングする時、しない時の両方の場合有り)

このクルマは他業者へ入庫し、その業者がディーラーに持ち込み診断修理を依頼するも直るかかどうか確信はないとのことで弊社へ相談そして入庫となった訳です。

実車点検
入庫後、テスターを当てるもエラーはない。テスター繋ぎっぱなしでデーターモニター等を見ながら何度乗っても何日経っても一向に症状は現れず至って正常。ある日走行中の電圧の低下を確認。診断機故障コードも電圧低下を指示。オルタネータで11.7Vしかないと同時にバッテリーの放電も著しいことが判明。オルタネータの不具合発生頻度は時々ということを確認。
ユーザーの訴える症状は確認できなかったものの、車両の電圧の低下により様々な症状がでたものと推測。

修理
オルタネータを交換し、バッテリーを満充電にして数日間の試運転後、全てが正常なのを確認し納車。

再発
数日後再び症状がでたとのこと。オルタネータは正常にもかかわらずバッテリーの電圧不足。漏電はない。従って充電不足を繰り返した為バッテリー自体が劣化。回復不能と判断し、再充電はせずユーザー依頼でバッテリーを交換。

再入庫
数日後それでも時々症状がでるとのこと。今回は不具合が発症したまま入庫。初めて症状確認。バッテリー電圧との関係がないことも判明。その後正常に戻り以降不具合は現れず。

診断
弊社の2種類のテスターを接続するもこれといった故障は見つからない。これでは進展が見込めないことから、弊社加盟の輸入車整備ネットワークよりより高性能なBMW専用テスターを借用し接続。
DSCN2711
まずは車両を識別。
DSCN2722
すると様々な部位に不具合や故障があることが判明。
DSCN2712
弊社のテスターよりも優秀な専用機はさらに奥まで進んでいける。
DSCN2718
診断と同時に配線図を見られるのがありがたい。

いろいろと調べた故障があちこちに波及していることがわかりました。
ナビは完全に故障していることはわかりましたがそれだけではなさそうです。
CPUの番号を吸い上げることができなかったり、装着されている装備がテスター上なかったり。
他にもたくさんありました。
DSCN2720
輸入車ネットワークの本部とパソコンを通信で繋ぎ遠隔操作で内部をみてもらいアドバイスを仰ぎました。

結果
ナビの故障は確定なのでナビを交換すれば完治するかもしれない。しかしテスターでによる診断で不具合がいろいろな部分に波及していることから完治しない可能性も十分に考えられる。
ナビの交換で1歩前進することは間違いないが、何歩前進すれば完治できるかはやっていかないとわからない。金額も納期もどれだけかかるか皆目見当もつかない。クルマには価値という物があり、クルマに対するよほどの思い入れがない限り価値を超えて金額をかけることは問題がある。今回はやればやるほど皆が怪我をする可能性があるので、その旨を十分に説明し業者判断で返却するに至った。

原因
さて、一番の問題はここ。何故こんな故障が発生したかである。通常起こりえない故障が実際に発生したのは事実。あくまでも推測でしかないが、オルタネータに不具合があってバッテリー上がりになった時、ブースターケーブルで繋いだと仮定。その時誤ってプラスとマイナスを逆に接続しなかっただろうか。輸入車に限らず国産車の逆接続が入庫した際によくあるのが、CPU系の破損部位がみつかりそれを交換すると他の部位が壊れているのがわかったりする。今回も本当の故障はオルタネータの寿命だけだったけど逆接続をした為に時間差で現れるようなへんてこな故障になってしまったのではないだろうか。

まとめ
この修理にあたって相当な時間を費やした。多くの人の知恵もお借りしたが残念ながら結果として完治させること、原因を特定するには至らなかった。しかし、いろいろなことを考え試したことで、弊社として引き出しが一つ増えたことは確かである。